《殺害予告と脅迫罪》TOMOROさんが動画にてコレコレさんが殺害予告?

様々なネットメディアにおいて問題へと発展している”コレコレさん vs TOMOROさん”について知っているでしょうか。

今までコレコレさんは加藤紗里さんとパブリシティ権侵害やプライバシー肖像権侵害などを起点に争いを起こしていました。
上記の問題については下記ページをご参照ください。
肖像権侵害とパブリシティ権侵害について,コレコレvs加藤紗里事件と判例紹介

そして今回紹介する内容としては、〈加藤紗里さんの元カレであるTOMOROさん〉が〈YouTuberのコレコレさん〉に対して殺害予告や脅迫をしているとのことです。
そこで、実際に起きたできごとを考察し、弁護士が法的観点から解説します。

実際にコレコレさんがTOMOROさんから受けたという殺害予告とは?

事の発端は、TOMOROさんと高校生社長として知られる戸田英志さんの動画の中で豪華な場所を利用していたことです。

なお、高校生社長戸田英志さんの情報商材販売と詐欺・特商法違反については以下の記事をご参照ください。

それに対してコレコレさんは、
「レンタルスタジオで誰でも借りられる。豪華な場所で撮っているけどお金持ちってわけじゃないんだ。騙されないように」
と撮影場所はレンタルスタジオではないかと指摘。

それに対しTOROMOさんは、
「ふざけるな!事実とは違う!
とコレコレさんに反発し、今回取り上げた問題の動画を投稿しました。

その動画内ではTOMOROさんがコレコレさんに対し、
「街で歩いていたら〇〇してやる」
「怖い思いとかしたことないんだろう、だから思い知らせてやっから」
など危害を加えることをほのめかす発言もしています。

また動画内ではTOMOROさんの後輩とされる人物が登場し、
「こいつ(後輩)がコレコレをしばくらしい」
とTOMOROさんが発言。

それを受けて後輩は、
「ケツの穴を掘る」
などと発言しています。

くわえて、
「後輩は2年の懲役刑が確定しているから何をさせても問題ない」
とTOMOROさんは強調までしています。

なお〈YouTuberのみずにゃんさん〉に対しても
「ウイルス除菌スプレーを100本分死ぬほどぶっかけてあげます」とも。

結果、コレコレさんは
「殺害予告を受けている」
と主張することに。

はたしてTOMOROさんの発言はコレコレさんに対しての“殺害予告”になりうるのか。脅迫罪等の犯罪になりうるのでしょうか?
以下、解説します。

殺害予告と威力業務妨害罪についての弁護士解説

殺害予告の多くは威力業務妨害罪や脅迫罪などで逮捕されるケースが多くあります。
では、今回逮捕されるケースに該当するのでしょうか。

まずは、威力業務妨害罪について考えてみます。
威力業務妨害罪とは“威力を用いて人の業務を妨害すること”となっています。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
威力業務妨害
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

刑法

威力とは、人の意思を制圧するような勢力をいいます(最判昭和32.2.21、最判平成4.11.27)

この威力には、暴行・脅迫はもちろん、それに至らないものであっても、社会的・経済的な地位、権勢を利用した威迫、多衆・団体の力の誇示、騒音喧騒、物の損壊等およそ人の意思を制圧するに足りる勢力一切を含みます。

そして威力に該当するかどうかは、犯行の日時場所、犯人側の動機目的、人数、勢力の態様、業務の種類、被害者の地位等諸般の事情を考慮し、それが客観的にみて人の自由意思を制圧するに足りるものであるかを判断すべきであって、現実に被害者が自由意志を制圧されたことを要するものではないとされています(最判昭和28.1.30 抽象的危険犯)。

以上をもとにTOMOROさんの発言が威力業務妨害として成立しているかを検討します。

発言内容や発言の方法(YouTube)等を客観的にみてみると、コレコレさんの自由意思を制圧し、その業務が妨害される危険があるとまでは少し考えづらい面があります。
したがって、結論としては、威力業務妨害罪は成立せず、逮捕、起訴される可能性は低いのではないかと思われます。

殺害予告と脅迫罪についての弁護士解説

一方、脅迫罪についてはどうでしょうか。

脅迫罪における脅迫とは“生命、身体、自由、名誉又は財産に対する害悪の告知”をいい、その程度は“人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知”です。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法

また、被害者本人が畏怖を感じていないとしても“一般人が畏怖するに足りる場合”も脅迫罪が成立します(抽象的危険犯)。

実際に過去の下記判決においても脅迫罪として成立しています。

脅迫罪は、本条列記の法益に対して危害の至るべきことの通告によって成立し、必ずしも被害通告者が畏怖の念を起こしたことを必要としない。

大判明43.11.15

さらに告知内容につき、第三者が絡んだ害悪の告知であっても、下記判例にあるよう脅迫罪が成立しています。

「お前を、恨んでいる者は俺だけではない、ダイナマイトで貴男を殺すと言っている者もある」「俺の仲間は沢山いて、君をやってけると相当意気込んでいる」等と告げる行為は、被告人自身又は影響を与え得る第三者による害悪の告知に当たり、脅迫罪を構成する。

最判昭27.7.25

以上をもとに、TOMOROさんが発言した内容は脅迫罪に該当するかを検討します。

まず、「街で歩いていたら〇〇してやる」については、「〇〇」の部分では「コロナ」との歌詞がついた音楽が流されてます。
そうすると「〇〇してやる」は、一般人をして「殺してやる」との意味に捉えることができるといえます。

ですので、生命に対する害悪の告知として、脅迫罪に該当し得る可能性はあります。

もっとも、上記発言につき、生命に対する害悪の告知まではいえず脅迫罪とならなくても、
「こいつ(後輩)がコレコレをしばくらしい」との発言
それを受けての後輩の、「ケツの穴を掘る」などの発言
くわえて、「後輩は2年の懲役刑が確定しているから何をさせても問題ない」との発言については、
TOMOROさんまたは影響を与えうる後輩による、人を畏怖させるに足りる “身体に対する害悪の告知”に十分当たるといえます。

したがって、今回TOMOROさんが動画にてコレコレさんに対して発言した内容は脅迫罪に該当し、逮捕される可能性はあるでしょう。
最後に今回のトラブルを動画でもまとめましたので、よければご視聴ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。